日本建設組合連合
HOME 組織情報 NEWS 事業内容

日本建設組合連合(建設連合)
会 長 菅 野 一 夫    


「消えた年金問題」、「改竄された年金記録」といった、所謂、年金記録問題も全ては社会保険庁職員もしくは組織体制に端を発している。そこに「人的不備」や「運営上の不備」が介在していたことは間違いない。しかしながら、年金制度を官僚が作り、国会にて法律並びに法案を審議し、成立させた国会議員には全く非が無いと言えるのだろうか。立法に責任を持つ役目を担う国会議員が、法案成立後の動静や実態を確認しないということは、職務怠慢ではないのか。

昭和60年4月に成立した国民年金法、厚生年金保険法等の一部改正により、昭和61年4月から法人事業所に属する者は、強制的に健康保険並びに厚生年金へと加入することが義務づけられた。当時の風潮としては、安定的な経済成長の下、「労働者の老後を守る」、「法人や個人の差をなくし、労働者に健康保険と厚生年金を適用する」という理念が先行し、右肩上がりの企業はある程度の財務余力を有しており、「誰もが笑顔になる法改正」と思われていた。また、国民年金並びに厚生年金の積立金も順調に積み増しされており、財政投融資に回る資金も潤沢であったろう。零細事業者にも厚生年金を適用させ、さらなる積立金の上積みを目指していきたい国の政策とも合致していた。この時点で、その後のバブル崩壊や今日のような経済情勢を誰一人として想定はしていなかった。

しかしながら、実際に昭和61年4月の法改正後、どれだけの事業者がこの法律を理解し、遵守しているだろうか。誰もが笑顔になっているのか、甚だ疑問である。遡れば昭和54年から再三にわたって当時の国会議員等により付帯決議されてきた結果としての法改正案であるが、こうした結果を招いていることは理解されているのであろうか。


平成18年9月に総務省行政評価局により公表された「厚生年金保険に関する行政評価・監視(評価・監視結果に基づく勧告)」によれば、本来健康保険並びに厚生年金に加入すべき事業所の適用漏れの件数は約63〜70万事業所に及び、被保険者数では約267万人に及ぶと見られている。また、適用漏れ事業所のうち加入指導した10万3,565事業所について、実際に加入したのは2,596事業所との結果が出ている。この数値が示すのは、既に法律や制度自体が破綻していることに他ならない。「加入しない」ではなく、「加入できない」のである。昭和60年の法改正自体が真に必要とされていたのか、現在でも甚だ疑問である。

前述のように、事業所の事業主や従業員の多くは健康保険や厚生年金に加入せず、現行法では加入できないはずの国民健康保険や国民年金に違法な加入を認め、受けることの出来ない国庫補助金の交付を受けている。また、場合によっては未加入も考えられるだろう。つまりその者たちは社会保険の適用を逃れるという「違法行為」を行っている。しかしながら一方で、国庫補助金の割合も異なるにも関わらず、違法行為を行っていたとしても保険料や掛金を支払っていれば国民健康保険は給付され、一定年齢到達時には年金給付が開始されるはずである。こうした事実は黙殺されるべきことなのか…。

年金記録問題は事務運営上のミスに大きな原因がある。しかし、上記した問題は運営上ではなく、法制度自体に根本的な問題がある。社会保険庁が今日までこうした問題を看過し、現状認識を怠り、等閑な対応に終止したことが問題をさらに複雑にした。それが法制度と社会実態とに大きな間隙を作り、取り返しのつかない地点まで来ている。国会議員とは国民の生活と社会をより良くすべき責任を追っているはずであり、この制度上の問題を放置し続けることは、怠慢であり、議員としての責任放棄である。





copyright(c)2006jcca all right reserved